NEM(ネム)とXEM(ゼム)

時事できごと

結城です
今日は個人的に気になっていることを。

コインチェック事件で盗まれたのはNEM?

仮想通貨取引所CoinCheck(コインチェック)が、1月23日に不正アクセスを受けて営業停止に追い込まれた事件については連日盛んに報道されていますから、皆さんも飽きるほど読み聞きしたことでしょう。
では、それはどんな事件だった?と聞かれたら「不正アクセスを受けて仮想通貨の一つであるNEM(ネム)が盗まれた」と答える人が多いのではないでしょうか?
しかし、これは正しくありません。
厳密には「仮想通貨のXEM(ゼム)が不正に引き出された」なのです。

今日は、このNEMとXEMについてお話ししましょう。

 

NEM(ネム)とXEM(ゼム)はどう違うのか?

 結論から言いますと、NEMはシステムの名前、XEMはそのシステムで使われる通貨の名前です。
従って「XEMが不正に引き出された」と表記するのが正しいのです。
システムは盗めませんからね。盗まれたのはあくまでも通貨であるXEMなのです。

これはNEM財団が発行したTechnical Reference(PDF)ですが、2ページに

“The underlying crypto currency of the NEM network is called XEM.” (NEMネットワークの基礎となる暗号通貨はXEMと呼ばれる)とはっきり書かれています。(※暗号通貨=仮想通貨)

つまり、NEMというのは仮想通貨であるXEMを運用するための専用システムの総称なのです。
またNEMを運営している財団の名前でもあります。
この辺は先日書いたRipple(リップル)と似ていますね。ただし、リップルはシステムの名称も、通貨の名称も、会社の名前も全部Rippleなので分りにくいのですが、NEM財団はシステムの名称と通貨の名称を使い分けています。

 

なぜ大手メディアまで正しくない表記を使うのか?

しかし、世間ではXEMと言ってもあまり通じません。仮想通貨のNEMが盗まれた事件といえば、誰もが「ああ、あの事件ね」と分ってくれますが、「XEMが盗まれた事件」と言っても、何それ?という反応を返す人が多いでしょう。
しかも大手メディアまでもが「NEMが盗まれた」と表記しているのです。

NEMプロジェクトが産声を上げたのは2014年1月です。 BitcoinTalkというウェブコミュニティーにて、ビットコインの欠点を改善しもっと使いやすい仮想通貨を新開発しよう、というコンセプトではじまったこのプロジェクトは、賛同者が増え注目を浴びるようになりました。
いつしかNew Economy Movement 略してNEMと呼ばれるようになり、その名が定着していったのです。 しかしNEMシステムで用いる通貨については、初期段階では呼称が一定せずNEM Coin、Currency of NEMなどと呼ばれていたようです。通貨の名称が無いと不便と言うことでXEMという呼称が与えられることになりました。

このNEMプロジェクトは、当時としては画期的なシステムでしたので、多くの人が注目し、その認知度も急速に上がりました。 一方で通貨の名称であるXEMはそれほど認知されませんでした。画期的なシステムであるNEM Systemの概要に興味を示す人は多く居ても、まだ流通もしていないコインの名称にまで興味を示す人は少なかったのは当然のこと言えます。
そして2015年3月にNEMシステムは一応の完成を見てカットオーバーします。最初のトランザクションが発生し、仮想通貨XEMが初めて取引されることになりました。

しかしながら、XEMと言っても通じない現状は続き、皆がNEM Coinなどと分りやすく呼んでいたのです。結局XEMの名称が定着しない状態のまま”NEM”は人気が急上昇し、様々な取引所に上場されることになります。
コインの上場で最も大事な事の一つは「ブランド」です。誰も知らない名称のコインは誰も買いません。ですので、XEMは多くの取引所で”NEM/XEM”などと表記されるようになりました。

これは昔のコインチェックの画面キャプチャですが、”NEM”と表記されていますね。

取引所がNEMとXEMの違いを理解していないはずはないので、ユーザーの分りやすさを意識して意図的に”NEM”と表示したのでしょう。
そして、ユーザー間でもNEMシステムの通貨単位はNEMであるという誤解が定着し、今に至るというわけです。

しかしNHKまでがNEMと単独表記するのはいかがなものでしょうか。視聴者に理解しやすいようにNEM表記を使うのは理解できますが、せめて「NEM/XEM」と併記すべきでしょう。

正しい表記や発音に拘るNHKなどの大手メディアでさえ、仮想通貨という新技術の扱いや理解はこの程度なのだ、という事でしょうか?

いつの日か、仮想通貨が正しく理解される日が来ることを願います。