【特集】アジア太平洋ブロックチェーンフォーラム(その2)

時事できごと

アジアの政治・経済専門家が都内に集い
ブロックチェーン技術を徹底討論

 

前回に続き、「2018年アジア太平洋ブロックチェーンフォーラム」についてお伝えします。
3月24日と25日の両日、都内で仮想通貨に関連した日中共同フォーラム「2018年アジア太平洋ブロックチェーンフォーラム」が開催されました。
政治・経済の著名人達が集まり、ブロックチェーン技術と仮想通貨の展望について、深い議論が行われました。前回は、このフォーラムの概要について紹介しました。今回はその詳細な内容をご紹介します。


概要

2018年アジア太平洋ブロックチェーンフォーラムでは、元国会議員 高邑勉(たかむら つとむ)氏、中国駐日本国大使館参事官 景春海氏、早稲田大学経済学部 野口悠紀雄教授、筑波大学 李頡教授、AiFC株式会社創始者兼CEO福沢栄治氏など、約100名のアジア・太平洋地域各国の政府役員、ブロックチェーン技術専門家及び経済学者や投資銀行の弁護士が参加しました。 アジア地域以外にも、アメリカ・イギリス・ロシア・フランスなど12ヵ国から合計600人を超える業界関係者が参加し、アジア・太平洋地域のブロックチェーン技術発展の方向性と、ブロックチェーン事業の変革について話し合い、また関連政策と規制などについても意見を交わしました。

二日間で行われたセッションは多岐にわたり、講演、シンポジウム、プロジェクト展示、円卓会議など、多様な形式で様々なテーマが話し合われ、ブロックチェーン技術の未来についてはもちろん、ブロックチェーン事業のイノベーションと規制など、事業モデルや政策に関するテーマも取り上げられました。


デジタル通貨とブロックチェーンが社会を変革する

経済学者 野口悠紀雄教授

ブロックチェーンと仮想通貨に関して、多数の著書やコラムを執筆している経済学者の野口悠紀雄教授が登壇し、日本とアジアにおけるブロックチェーン技術の現状と展望について講演しました。

教授は、著書において、ブロックチェーンは非常に重要な発明であり、インターネットの発明と同等に世界を変えうる技術である、と繰り返し論じていますが、このフォーラムにおいても「ブロックチェーンの出現は、社会全体のシステムを揺るがす変化をもたらす」と強調しました。 金融産業ではすでにブロックチェーンが広く応用され、主にはデジタル通貨、証券取引、保険及びクラウドファンディング(ICO: Initial Coin Offering)における利用が目立つ。このほか、ブロックチェーン技術は共有経済、IoT(モノのインターネット: Internet of Things) 、商品のソーストレースなどの分野においても応用が始まっている。ブロックチェーンを導入した場合、完全オートメーション化した会社や組織機構が実現する可能性もある。また、野口教授は「中国本土、香港、シンガポールは現在、ブロックチェーン事業の発展において世界の先端を走っている」とも述べました。


ブロックチェーン + IoTはさらに多くの産業を生み出す

筑波大学 李頡教授

筑波大学教授の李頡氏は、ブロックチェーンの発展性とその応用について講演しました。

ブロックチェーンは今後も発展し続け、かつ成長し続ける記録方式であり、その中心的な技術は暗号化システムである。暗号化を通じて、ブロックチェーンのセキュリティを確保することができる。
また、ブロックチェーンはプラットフォームとしてみなすことができると同時に、一種のサービスであると見ることもできる。今後のIT産業において、ブロックチェーンは一種のアプリケーションサービス技術として使用することができる可能性もある。
ブロックチェーンとIoT(モノのインターネット Internet of Things) 技術の融合は、さらに多くの産業を創り出すことになるが、最も大事なことは、一つ一つの情報が安全で信頼できる方法で記録されることである。と教授は述べました。

さらに李頡教授は、ブロックチェーン + IoTの発展はこれから平坦な道を歩むのではなく、さらなるセキュリティー問題とプライバシー保護の問題を重視し続けていくべきである、とも指摘しました。
そして、セキュリティ問題以外にも、ストレージ容量の制限、コンピューティング能力の制限、量子コンピューティングの脅威、アナーキズムと脱標準化主義などの問題も依然として存在しており、その道は様々な困難が待ち受けていると指摘しました。

しかしながら、今後もブロックチェーン技術のセキュリティーシステム応用に関する法律や規制は徐々に整備され、技術の面からみて、ブロックチェーン技術とIoT技術の融合は将来性有望である、と前向きに締めくくりました。

豪華な講演者(左から野口悠紀雄教授、李頡教授、福沢栄治CEO、斎藤創弁護士)


AIとブロックチェーンが世界を覆す

AiFC株式会社 福沢栄治CEO

AiFC株式会社のCEO 福沢栄治氏は、ブロックチェーンとAIの融合について講演しました。

iPhone Xが顔認証でロックを解除することにより、画像認証は人工知能(AI)の最も成熟したアプリケーションのひとつとされている。しかし、現在の画像認証技術はまだ完全ではなく、ある面ではAIの情報処理にはまだ限界があり、出された答えが必ずしも正確ではないことがある。 例えば、微かなノイズでも画像認証に影響を与え、セキュリティ問題を引き起こす可能性があると指摘しました。
このように、AI分野では比較的成熟している画像認識も未だに発展の余地があり、様々な可能性があると述べました。

そして、その新たな発展の方向性として、福沢氏が提唱したのが、人工知能とブロックチェーン技術の融合です。
福沢CEOは、人工知能とブロックチェーン技術を融合した場合、新しいアプリケーションが生まれ、世界を覆すことになる、との持論を展開しました。AIは理解、認知、意思決定をすることができ、ブロックチェーンはセキュリティー確保と記録ができる。人工知能は暗号化と融合しやすいため、両者の融合は可能性が非常に高い。AIが理解したものをブロックチェーンは暗号化して保護することができる。また、ブロックチェーンはAIが分析した情報を追跡、理解、分析することができる。
このように、ブロックチェーン技術の応用は金融や通信だけに限らず、様々な技術と融合させることが出来き、その可能性は無限にあるとの見解を示しました。


ICOはポジティブな方向に発展する

創法律事務所 斎藤創弁護士

スピーカーの斎藤創弁護士は金融関連のベテラン弁護士で、2013年からビットコイン、仮想通貨などに関する法律業務に携わっています。斉藤弁護士の事務所では、2017年の夏ごろから、ICOに関する問い合わせが急増し、クライアントはICOに関する各国の立法や仮想通貨の税金およびICO立法の方向性などについて強い関心を示しているとのことです。

日本でICOを行うには、2つの条件をクリアしなければなりません。仮想通貨取引業界に登録し、そして仮想通貨販売の資格を取得することです。斎藤弁護士は、ICOが合法的になる可能性は非常に大きい、と予想しました。
世界中から資金を集めることによって、昔は株式によって1億円を調達できたベンチャー企業でも、ICOによって10億円を調達することができ、昔10億円を調達できた会社は、ICOによって100億円を調達できることになる。CoinCheck事件が鎮まると、ICOがポジティブな方向に向かって発展することと信じている。と日本のICOについて、前向きな予想を語りました。


激動の明るい未来がすぐに来る

フォーラムに登壇した講演者の話は、様々なテーマや視点から語られました。しかし全員に共通していたことは、誰もがブロックチェーン技術の進歩の早さと、将来の無限の可能性を示していたことでした。
1月からの仮想通貨相場の下落や、数々のセキュリティー問題とそれに起因する規制の強化などで、市場のマインドは冷え込んでいます。
しかし、技術者や経営者の心は冷え込むどころか、ますます加熱していることが、会場全体の熱気となって伝わってきました。
去年1年はブロックチェーン技術が急激に発展した年でした。そして2018年は、ブロックチェーン技術が現実社会の様々な分野で実践され、リアルなビジネスにおいてブロックチェーンと仮想通貨が利用される年になると予想されています。

次回は、「アジア太平洋ブロックチェーンフォーラム」で開催されたパネルディスカッションについて報告します。