BinanceやOKExの誘致に成功したマルタ共和国(その2)

深掘り解説

OKExもマルタへ進出
-2大取引所が地中海を目指す理由

 

その1から続く

 取引額世界最大の仮想通貨取引所はBinance(バイナンス)だ。そして、取引量世界最大は同じく香港に拠点を置く取引所であるOKEx(オーケーイーエックス)である。OKExもまた、マルタ共和国への進出及び拠点設置を発表した。
4月中旬OKExのCEO 李書沸(リー・シューフェイ)氏は、同国への進出を発表すると共に、「マルタ政府と、法や規制に関する問題と計画を互いに理解するためにオープンな対話を継続していく」 とコメントし、マルタ政府と密接な関係を持って前向きに事業を進める意思を表明した。


中華系取引所のマルタ進出が続く理由

 BinanceだけでなくOKExもマルタへの進出を図っている背景には、仮想通貨に対する中国政府の強い規制がある。
中国政府は、2017年夏から仮想通貨に対する規制を急激に強化した。資産の国外流出を阻止することが目的だが、独裁政府の強権を活かし、中国本土での仮想通貨売買を禁止し、取引所を強制的に閉鎖させた。この際、香港特別行政区は規制を免れたため、Binance以下多くの取引所は、香港で事業を継続しながら、他国への脱出を検討し始めた。優秀な中国人技術者達は、日本、シンガポール、米国等へ逃れて、新たな事業を始めた。しかし、最近では香港でも当局の干渉が強くなっているという。
ここに目を付けたのがマルタ政府だ。マルタは、国外脱出を図る中国企業を積極的に誘致する方針を鮮明にしている。
中国政府が仮想通貨を規制する少し前のことになるが、2017年3月にマルタのジョセフ・マスカット首相は、ブロックチェーンと仮想通貨を国家の基本政策として設定する法案を議会に提出し、この法案は翌月可決された。マルタ政府の発表によると、’18年中にブロックチェーン関連企業がもたらす経済効果は14億2千万ドル(約1550億円)になると見込まれ、同国のGDPの10%以上を占める主要産業になる予測だという。


ギャンブル国家 マルタ

 前回の記事でも少し触れたが、マルタ共和国はEU最大のギャンブルセンターだ。法に基づいて認可されたカジノが狭い国土の中に大小合わせて1,000以上あり、またオンラインカジノ(インターネットカジノ)の拠点としても世界有数の国である。ヨーロッパ中のカジノ関連企業がマルタ島にサーバーを置き、世界中にインターネットギャンブルを提供している。
そしてこれらの合法的なギャンブルがマルタにもたらす経済効果は、税収の10%を超えるという。
他のEU諸国にも、カジノを合法としている国は多い。しかし、それらの国々では、規制は厳しく税率も高い。また、オンラインカジノはマネーロンダリング対策の必要もあるため、さらに制限が厳しいことが一般的だ。
しかし、マルタ政府はあえて規制を弱くし、税率も抑えることで、ヨーロッパ中のギャンブラーを呼び込む政策を取っている。資源も人口も少ない小国ならではの生き残り政策だ。

マルタ政府が、仮想通貨関連企業を誘致する理由は、カジノ誘致に対する方針と同じであろう。
カジノも仮想通貨も「投機的」な側面を持つ。それ故に、各国は法を定めて規制し、厳しく監視している。仮想通貨を「投機」と表現することに抵抗を覚える人も多いと思われるが、ビットコインに代表される仮想通貨はボラティリティーが大きく、乱高下する相場が人々を狂乱させている現在の様子はカジノのそれと変わらないのもまた事実だ。


仮想通貨のデファクトスタンダードを目指す国家

ヨーロッパのギャンブルセンターとして、マルタの人々は長い期間カジノを運営し経験を蓄積してきた。その気風が仮想通貨関連産業に対する積極的な誘致に繋がっているのかもしれない。 カジノに続く第二の産業として仮想通貨を発展させ、一方で規制や管理の標準化をいち早く進めることで、世界をリードすることも出来るだろう。実際に、マルタの政策立案者達はデジタルアセットの分野で経済を推進していく方法を模索している。

BinanceやOKEx等の企業にとって、マルタの積極的な方針は渡りに船の存在に違いない。
現在、多くの国家が急速に発展する仮想通貨の取扱いに手を焼いている。3月にアルゼンチンで開催されたG20会議では、世界的な規制方針が制定されることを市場関係者は期待していた。しかし、議論は次回会議に持ち越され、市場に失望が広がった。
他方、先進国と準先進国が仮想通貨の取扱方針を決めかねている状況を尻目に、地中海の極小国家はいち早く法整備を整え、企業誘致の政策を打ち出した。

カジノという他国が取扱いに慎重になっている産業を国家の主要産業に据えて税収を伸ばしたように、マルタはいま仮想通貨でも世界をリードする存在になることを目指している。

このギャンブルアイランドの将来は仮想通貨でさらに飛躍するのだろうか?
それは、先進国が仮想通貨をどのように位置づけるかにかかっている。投機とみなして封じ込めようとするならば、世界中のマネーはインターネットの海を渡って地中海の小国へと逃避するだろう。