ロシア 仮想通貨法整備見送り

時事できごと

仮想通貨はしばらくグレーゾーン

 

 ロシアのプーチン大統領は、今年3月に仮想通貨に関する法整備を進める方針を発表していた。
しかし、7月を目処に提出される予定であった法案はいまだ発表もされておらず、またロシア金融市場委員会は、仮想通貨の徴税方針に対して、現行法を適用する旨を発表した。このことから、仮想通貨に関する法案採択は見送られたと推測されている。


ロシアの仮想通貨事情

 ロシアでは、仮想通貨に関する法律が存在せず、仮想通貨は法的に曖昧な位置づけとなっている。
従って、取引所に関する方も存在せず、ロシアでは認可を受けていない取引所が多く存在している。これらの取引所ではKYC(Known Your Customer、口座保有者の本人確認)が十分に行われておらず、ハッキング等の不正な手段で得られた仮想通貨の換金のために、ロシアの取引所が利用されている疑いも持たれている。
例えば、今年1月に日本の仮想通貨取引所Coincheckから不正に引き出された仮想通貨XEM(NEM)の一部は、いくつかの匿名コインに換金された後、ロシアで現金化されたと噂されている。

 このような状況を改善するために、ロシア政府は法整備を進める方針を示していた。今年3月に、プーチン大統領は仮想通貨に関連した2本の法案が7月までに議会を通過する見通しを示していた。しかし、7月後半になっても、法案の審議は進んでおらず、政府発表も報道もほとんどない。


財務省と中央銀行の思惑

 背景には、ロシアの各省庁の思惑のズレがあると推測されている。
ロシアの財務省は、ICOに対する規制を設けて詐欺的なICOを排除し、仮想通貨が信頼の置ける資金調達手段となるような法律の整備を求めている。
一方で、ロシア中央銀行は仮想通貨の存在自体を否定しており、仮想通貨を合法化することに反対している。

これに頭を抱えているのが、金融市場委員会だ。
7月16日、ロシア金融市場委員会のAnotoly•Aksakov(アナトリー・アクサコブ)委員長は、「仮想通貨の売買及びマイニングによって得られた利益は、通常の税法により課税する」と発表した。
Aksakov委員長は、「仮想通貨のための特別な税法を制定する予定が無い」と、ロシアの新聞「イズベスチャ」のインタビューに答えた。 Aksakov委員長は今年3月の時点で、早期に立法される、とコメントしていたが、どうやらこの思惑ははずれたようだ。


裁判所も独自見解

政府の混乱をよそに、裁判所は仮想通貨を資産とみなす判決を下した。
未だに法律が制定されず、仮想通貨の位置づけが曖昧なロシアだが、ロシア連邦裁判所は異なる見解を持っているようだ。ロシアで起こった、ある破産案件の裁判で、裁判所はビットコインを私有財産とみなし資産に組み入れる判決を下した。

このように、ロシアでは、財務省、中央銀行、金融市場委員会、裁判所などの関係各機関が独自の解釈で仮想通貨を定義している。この状態が長く続くと、市場に混乱を呼ぶだけでなく、マネーロンダリングなどの犯罪の温床となりかねない。

Aksakov委員長は、「政府が仮想通貨に対して、独自の税法が必要だと考えているなら、対応する法案を作成するだろうが、この段階では他の形式で仮想通貨の納税問題を処理しないはずだ。」とコメントした。そして「このことは、将来の仮想通貨税法を導入する可能性を排除しない。」とも付け加えた。
早期の立法を示唆した3月から大きく後退した彼の発言は、ロシアの仮想通貨に関する法整備の前途多難を示しているようだ。