イランが国家デジタル通貨発行プログラム開始

時事できごと

米国の経済制裁を仮想通貨で回避

イランは現在、アメリカから強力な経済制裁を課されている。この経済制裁から逃れるために、イラン中央銀行は国家デジタル通貨プログラムを立上げ、仮想通貨による資金調達と制裁に影響されない金融インフラの構築を模索している。


イランの経済状況

 米中ロ英仏独とイランの7カ国は、2015年に「包括的共同作業計画」を締結し、イランが濃縮ウラン貯蔵量の削減などで核開発を制限する代わりに、欧米は経済制裁を解除した。しかし、経済制裁の解除により資金調達に余裕ができたイランは、弾道ミサイル開発を加速し、またシリア、レバノンなどへの関与を拡大し、中東の不安定要因を拡大させる結果となった。米国に強い影響力を持つイスラエルが、このイランの再台頭に強い懸念を示した結果、トランプ米大統領は今年5月、包括的共同作業計画から離脱し「最大の経済制裁」をイランに課すと表明し、実行に移した。


自国仮想通貨発行

 石油輸出だけでなく、海外企業と取引や各種資源の輸入までもが制限されたため、イラン経済は困窮している。この状況を回避するための手段として、イランは国家デジタル通貨プログラムを始動させた。
イラン国営放送の Press TVによると、イランの科学技術省はイラン中央銀行と共同でこの計画を進めているという。同省の投資担当副大臣Alireza Daliri( アリレザ・ダリリ)氏は、「我々は、イランで国産デジタル通貨を使用する準備をしている」 「この通貨は、資金の送金・受金を促進するだろう。さらに、経済制裁が行われたときにも役に立つ」と、コメントした。
“We are trying to prepare the grounds to use a domestic digital currency in the country. This currency would facilitate the transfer of money (to and from) anywhere in the world. Besides, it can help us at the time of sanctions.”
ダリリ副大臣は、今年1月にも「国家デジタル通貨の開発を支援する」と述べている。また4月には輸出入の支払いを円滑にするための「新しい仮想通貨」の開発についても言及した。

一方で、イランはビットコインやその他の既存仮想通貨に対して強い警戒心を持っている。経済制裁によって同国の通貨が下落し、資金の逃避が起きている状況にあって、イラン国民は自国通貨よりもビットコインなどの仮想通貨に価値を求めるようになっているためだ。
仮想通貨を野放しにすると、信用の低い自国通貨イラン・リヤルがさらに売られる結果になりかねず、経済崩壊を招く恐れがあるとの懸念からだろう。

今年の4月、イランの情報通信技術部長官のMohammad Javad Azari-Jahromiは、イランの国家デジタル通貨について、「すべてのデジタル通貨は、制裁を回避できる。デジタル通貨は、(いまはまだ)米国の金融規制機関によって規制されていないため、国家のデジタル通貨は明らかにこれをやり遂げることができる。」とコメントし、米国によるイランへの制裁回避に用いる意図を明かした。


ベネズエラと類似性

 トランプ大統領は、8月からイランが米ドルを購入することを禁止する最高レベルの制裁を行う。また11月からはイランの原油を購入する国や企業へも制裁を課す方針を表明している。
この構図はベネズエラに似ていると言えるだろう。ベネズエラは自国産石油の購入権と連動した国家仮想通貨「ペトロ」を発行した。ペトロの発効理由も米国の経済制裁に起因する。ペトロの発効が公表された当初は、国家の裏付けのある通貨として注目を浴びたが、トランプ大統領はすぐさま米国民によるペトロ購入と使用を禁止する大統領命令を発した。また、トランプ大統領は「マドゥロ政権が米国の制裁を回避するために発行した通貨だ」と断定し、さらなる規制を課した。

イランの国産デジタル通貨は、ベネズエラの轍を踏むのか、あるいは国家経済回復の立役者となるのか。結果はそう遠くないうちに現れるだろう。

 

出展:
sputniknews

Cripcy
日経新聞
コインテレグラフ
Morningstar
Fortune