ベネズエラ政府発行の仮想通貨ペトロ(その4)

連載解説

政府発行仮想通貨ペトロは信頼できるのか?

 

前回はこちら
過去三回の記事でベネズエラ経済の特殊性を見てきました。
それを踏まえた上で、ベネズエラ政府が発行した仮想通貨ペトロを検証してみましょう。


マドゥロ政権の現状

 ハイパーインフレに苦しむマドゥロ政権の現状を簡単にまとめると、

外貨獲得と生活必需品の輸入に関連する利権と汚職が蔓延しており、政府は国内産業を育てる発想がない。
マドゥロ政権の行き当たりばったりの政策により、危機的状況にあっても効果的な改善策が打ち出せない。
餓死者も出始めたような危機的状況では、政府の支持率は当然ながら地に落ちるが、往生際の悪いマドゥロ大統領は、国会や裁判所よりも上位の組織である制憲議会を発足させ、国会を事実上無力化し、独裁へと移行している。
また、アメリカのトランプ大統領はベネズエラに経済制裁を科し、外貨獲得を妨害しようとしています。


インフレ改善のための仮想通貨?

 この状況でベネズエラ政府が目を付けたのが仮想通貨です。
米国の横やりで外貨獲得が難しくなったベネズエラ政府は、自国産の石油と連動する仮想通貨ペトロの発行を2017年12月に発表しました。

2018年2月にプレセールを開始し、4000億円以上を調達したとベネズエラ政府は発表しています。
そして、ペトロのプレセールが終了すると、今度は金に裏付けされた仮想通貨 ペトロ・ゴールド(ペトロ・オロ)を発表し、2000億円程度を調達する予定であると発表しました。

さらに、先月には新通貨ボリバル・ソベラノに仮想通貨ペトロを連動させると発表。ハイパーインフレーションが起きている現在、ベネズエラの法定通貨は一秒ごとに価値が下がっているといっても過言ではなく、昨年比で数万倍のインフレ率という状況を改善するために、オイル1バレルに連動したペトロにボリバル・ソベラノを連動させることで、通貨のインフレを抑止しようとしています。

このような、経済学の常識では考えにくい「斬新な」仮想通貨政策を次々と発表するマドゥロ政権に対して、世界の投資家は厳しい目を向けています。
英米系投資銀行ブラウン・ブラザーズ・ハリマン(BBH)のレポートは、ペトロを「デスパレートな(絶望的な)戦略」と切り捨てていますし、ハイパーインフレーションに詳しいジョン・ホプキンス大学のスティーブ・ハンク教授は「これはベネズエラがよくやるゴマカシだ。ペトロの問題は、ペトロは詐欺であって取引すらされていないということだ」と批判しています。また、リスクマネジメントの専門家のラウル・ガレゴス氏は、「ベネズエラ政権が権力を持ち続けるためになんでもやるという姿勢の表れだ」とし「マドゥロ大統領の求心力が弱まってきており、今後何かが起きるかもしれない」と話しています。

これらの批判や疑問に対して、ベネズエラ政府は沈黙を保ち、信ぴょう性を立証するための資料を提出したり、仕組みを改善するといった姿勢は見せていません。
一方で、制憲議会が作成中の憲法改正案には「仮想通貨の中央銀行」の設立が盛り込まれる予定であると、制憲議会の有力メンバーが発表しています。しかし、やはりその詳細は示されておらず、通常法定通貨であるボリバルを扱う中央銀行とは異なる第二の中央銀行になるのか、あるいは現在の中央銀行が仮想通貨を第二の法定通貨として位置づけるのか、来月発表される新憲法案に注目が集まっています。


ペトロの将来性は?

 

ペトロに明るい将来はあるのでしょうか?
マドゥロ大統領が信じているように、制憲議会と新憲法によってベネズエラの経済が劇的に改善し、同国内外で仮想通貨ペトロが活発に取引されるようになれば、そして原油価格が上昇してベネズエラの外貨獲得が容易になれば、さらに米国などの国際社会の制裁が緩和されれば、加えてマドゥロ政権が長期間安定して権力の座にあれば、なおかつ社会主義者のマドゥロ大統領が改心して市場の信頼構築を重要視する人物になったならば、ペトロは投資家にとって魅力的な仮想通貨になるかもしれません。

これらの条件が満たされる可能性はあるのでしょうか?