仮想通貨のはじまり(その2)

深掘り解説

ニック・スザボ
ビットゴールドとスマートコントラクトの提唱者

 

前回、デジタル通貨とブロックチェーンの誕生について、簡単に説明しました。
ナカモ トサトシによって開発されたビットコインが、仮想通貨の歴史の始まりだと思っている人が多いですが、仮想通貨の概念自体は100年以上前から存在し、またコンピューターネットワーク内で利用されるデジタル通貨の概念はコンピューターの誕生と同時に研究が開始されています。


ビットゴールド

ビットコインは偉大な発明ですが、ナカモトがビットコインとブロックチェーンを開発するに当たり、多大な影響を受けた人物がいます。
それがニック・スザボ(Nick Szabo)です。

スザボは、「ビットゴールド(Bit Gold)」を開発し、またスマートコントラクトの概念を提唱した、コンピュータサイエンティストにして暗号研究家です。
1998年、スザボは、彼がビットゴールド(Bit Gold)と名付けた、非中央集権型のデジタル通貨を開発します。 ビットゴールドのシステムは、それ以前には存在しなかった革新的な概念であり、また後のナカモトのビットコインへとつながる先駆者でもあります。

スザボのビットゴールドの構成では、ネットワークへの参加者は、自身のコンピューターの計算能力を、暗号解読に提供することで貢献します。 ビットゴールドのネットワークでは、解かれた暗号は、Byzantine fault tolerance という公開システムへと送信されます。
これは、不特定多数の人々(のコンピューター)が参加するFault-tolerant computer system (無停止コンピューターシステム)であり、参加者のコンピューターがネットワークで有機的に接続された非中央集権的なシステムです。

暗号解読のプロセスは、それぞれ連続しており、解かれた暗号はブロックとなって先のブロックに連結され、新しい資産が生まれる、あるいは資産の移転があるたびに、ブロックのチェーンは長くなっていきます。
暗号が解かれて新しく生成されたブロックは、ネットワークへと送られ、ネットワークに参加する他のコンピューターはその解読された暗号が正しいかどうかを検証し、半数(51%)のコンピューターが正しいと認めるとブロックは承認され、タイムスタンプが押され、新しいコイン(資産)が生成されます。 51%以上が承認を行わない限りブロックはネットワークに受入れられず、次のブロック生成プロセスへは移行しません。 参加コンピューターは暗号解読をやり直し、過半数の承認が受けられる新しいブロックを生成します。

このような、不特定多数が参加する非中央集権的なネットワークシステムでは二重送金問題の対処が重要な課題になります。銀行や政府などの中央集権的なシステムは、送金者が一人(一組織)であるため二重送金は行われませんが、非中央集権的なシステムで二重送金問題を解決するためにスザボが考案したのが、51%による承認プロセスです。
このシステムは、ビットコインとブロックチェーンが用いているシステムと非常に類似性が高いものであり、そのことからもナカモトがスザボの研究に強い影響を受けていることが解ります。


1998年のBit Gold の発表に先立ち、スザボは96年にスパートコントラクトに関する論文を発表しています。
「Smart Contracts: Building Blocks for Digital Markets (スマートコントラクト: デジタルマーケットのためのブロックの生成)」と題されたこの論文は、現在のスマートコントラクトの嚆矢であり、我々が目にするスマートコントラクトの基礎技術はこの時すでに完成していました。

その3へ続く