仮想通貨のはじまり(その4)

深掘り解説

デイビット・ショーン

DigiCashの創設者

 

David Chaum (デイビット・ショーン)は、コンピューターサイエンティストであり、暗号研究家です。 匿名性の強いデジタル通貨「ecash」を開発したことで有名であり、 仮想通貨世界では、彼が創設した「DigiCash」の方で有名ですね。


インターネット暗号技術の先駆者

 カリフォルニア大学でコンピューターサイエンスと経営学の博士号を取得したショーンですが、1982年に自身の論文にて安全なデジタル通貨について言及しており、それには彼が考案した「blind signature (匿名の記名)」が含まれています。 このblind signature は、利用者のプライバシーを秘匿しながらもシステム的には一個人に紐づいており、ユーザーは自分と他者が混同されることを避けることができます。 彼の功績はこのBlind Signatureによって有名ですが、同論文で彼はまたeCashにも言及しています。 eCashはお金をデジタル形式でユーザーのコンピューター内に保管し、専用端末を持つ店舗でお金として利用できるというアイデアです。クレジットカードやキャッシュカードと異なる点は匿名性であり、ユーザーは銀行口座もクレジットカードも利用することなく買い物ができるようにデザインされています。 eCashの安全性は公開鍵の電子署名を利用することで担保されています。誰が何処で何を買ったか、誰も電子的に追跡することができないシステムを目指している仕組みです。また、blind signatureは電子メールの匿名性も重要視しています。 送信者と受信者の間で交わされた電子メッセージは、第三者には解読できず、また受信者もそのメッセージが誰から送られたか判りません。 

当時のアメリカでは、政府が個人のプライバシーに介入することを非常に嫌う雰囲気があり(監視社会であるソビエト連邦がまだ存在していた)、コンピューターギーク達の間では通信の匿名性は非常に重要なテーマだったのです。

彼は、この論文を発表した1982年にInternational Association for Cryptologic Research (国際暗号研究団体: IACR)の設立も行っています。 IACRは現在も存続しており、国際的な暗号研究者たちの交流の場として重要な役割を果たしている非常に重要な組織です。

彼のアイデアとIACRは、1980年代後半の Cypherpunk (サイパーパンク)の発展に大きな影響を与えることになります。 前回紹介したハル・フィニーが、サイパーパンクでRe – Proof of Workを提唱したことからもわかる通り、ショーンのこのアイデアは現在の仮想通貨のトランザクションにも強い影響を与えています。 

ショーンは、blind signature のアイデアを発展させて 1990年に オランダのアムステルダムにて DigiCash 社を設立します。  匿名の電子的支払手段を提供する DigiCash 社のサービスは、中央集権的な管理手法を用い、また法定通貨を用いていることから、仮想通貨とは大きく異なりますが、電子通貨の歴史を語る上では欠くことのできない存在です。

残念なことにDigiCash社のビジネスは軌道に乗らず、98年に破産を宣告します。その後、同社は eCash Technologies から買収を受け、DigiCash社の技術と資産は受け継がれていくことになります。ショーンとDigiCash社は、匿名の通信及び通信の暗号化を目指しており、彼の開発した暗号化技術の数々は、現在のインターネットを支える基本的なシステムの多くに応用されています。

 

その5に続く