法定デジタル通貨は実現するか(その1)

深掘り解説

中央銀行が仮想通貨を発行する日は来るか?

 

 私達が普段利用しているお金は、生きていく上で不可欠のものですが、我々がお金と言うときは、通常は現金を指します。 また現金とは、その人が暮らしている地域の政府が発行した法定通貨のことを普通は指します。
急速にデジタル化が進むこの世界で、現金もデジタル化される日は近いのでしょうか?


現金とキャッシュレス社会

 ほんの四半世紀ほど前までは、銀行送金とクレジットカードを除けば、支払いに利用できるデジタルな手段といえばせいぜいテレホンカードやJRが発行していたオレンジカードくらいでした。この十数年で電子マネーや隠来ペイメントなどが急速に普及してきており、最近では紙幣や硬貨を実際に使う機会が減ってきています。

とはいうものの、クレジットカードや電子マネーを利用したときに用いられる価値の媒体手段は、やはり法定通貨です。 日本国内ならば、購入者の口座から円が減り、販売者の口座に(タイムラグはあっても)円が振り込まれます。 これは、言い換えれば、口座保有者の残高と同額の紙幣か硬貨がどこかに存在しているのです。 「どこか」というと、主には銀行内です(中央銀行を含む)。

「キャッシュレス社会」という言葉を耳にしたことのある人も多いと思われますが、本当の意味でキャッシュ(現金)が消えてしまっているわけではなく、私達の目にとまらなくなっているだけで、キャッシュ自体は存在しているのです。

ほとんどの人は、そしてほぼ全ての法人は、お金を「口座」の中に保管しています。 口座を持たずに貨幣をタンスや金庫の中にしまっている人なんて、ほとんど居ないでしょう。 一方、日本国内で流通しているお札(銀行券)の残高は2017年末時点で106兆円だったそうです(硬化などは含まない)。 枚数では165億枚で、これを重ねると1650kmになり、垂直方向なら一部の人工衛星に届く高さですし、水平方向ならば札幌市から鹿児島市に届きます。

これほどの現金は普段どこにあるのでしょうか? 実はそのほとんどは、銀行、それも中央銀行(日銀)の金庫の中に一度も使われたことのないまま保管されています。 何でそんなに無駄なことをしているのかというと、法律でそう決まっているからです。 紙幣を印刷せずに、あるいは硬化を鋳造せずに、口座のデジタルデータだけを日銀や政府が増やすことはできません。


中央銀行デジタル通貨(DBDC)

使わないお札(銀行券)を印刷して保管しておくだけなんて、そんな無駄なことをやめて現金をデジタル化してしまおう、という考え方が法定デジタル通貨です。
英語では、Central Bank Digital Currency(CBDC)であり、中央銀行デジタル通貨と訳されます。ほかにも、Digital Fiat Currency、 Digital base moneyなどとも呼ばれます。

これの考え方は、あくまでもデジタル通貨であって、仮想通貨ではありません。 仮想通貨もデジタル通貨の一種ですが、2018年現在で議論されているDBDCは、法律に基づいて政府と中央銀行により厳格に管理される中央集権的な法定通貨です。

現在、世界中のほとんど全ての国家と中央銀行は、DBDCに否定的です。 多少前向きに検討をしている国家はスウェーデンやカンボジアなどごく少数です。それらの国でも、検討がされている段階であって、法定デジタル通貨の導入に向けた実際の動きがあるわけではありません。

次回に続く