仮想通貨の始まり(番外編 3)

連載解説

E-Gold

 

 E-Goldは仮想通貨ではありませんが、デジタル通貨の一種であり、最盛期には500万人の登録者と、年間20億USドルの送金があった、巨大なデジタル通貨システムでした。その最大の特徴は、デジタル通貨でありながら金や銀などの貴金属資産の裏付けがあったことです。


金本位制のデジタル通貨

 仮想通貨の特徴のひとつは、資産の裏付けがないことです。ビットコインだけでなく、イーサリアムやその他多くのアルトコインは、純粋なデジタルデータであり、それ自身に価値はありません。 もちろん、例外も当然あり、その典型的な例は テザー(USDT)です。 テザーは仮想通貨ですが、1テザーは1USドルに固定されており、保有者は(原則として)いつでも同数のUSドルに兌換できます。 また、証券型の仮想通貨も少数ですが存在し、株式のように発行体が持つ資産に紐づけられています。

E-Goldは、仮想通貨ではありませんが、デジタル通貨の一種です。その登場は、ビットコインの発表よりも10年以上早く1996年です。e-gold 社とその傘下の Gold & Silver Reserve Inc. (G&SR) によって運営されていたこのシステムは、金や銀などの貴金属をグラム単位で保有または送金することを可能としていました。

E-Goldは、医師のダグラス・ジャクソンと法律家のバリー・ダウニーによって1996年に設立されました。 2000年頃から利用者数が急増し始め、2004年に口座数が100万を超えるほどの巨大サービスへと成長しました。 一般的にE-goldは「成功した最初の電子通貨」と評価されています。 同時代には、ニック・スザボのbit goldなど様々な電子通貨が試みられてきましたが、それらの試みの多くは失敗しています。 e-goldが画期的だったのは、電子通貨でありながら伝統的なコインのように貴金属としての価値があったことです。

それというのも、創業者のジャクソンとダウニーは、もともと金貨を取り扱う仕事をしており、その経験を活かしてe-goldのサービスを始めたのです。 e-goldのシステムは仮想通貨とよく似ており、自分の口座から他の口座へ電子的に情報を送信することで、貴金属の所有権を移転することができます。 また、同社が提供するオンラインショップにて、e-goldを用いて買い物をすることもできました。仮想通貨と異なる点は、利用者が望めば現物の貴金属と交換できる、金(銀)本位制を採用していたことでしょう。

e-goldのロゴ


法規制による廃業

 一時は取扱高が年間20億ドルを超える巨大ビジネスへと成長したe-goldでしたが、米国当局から銀行法や資金決済法に違反しているとの警告を受けます。 貴金属に裏付けられてはいるものの、電子データを仲介しているため、法的な位置づけが曖昧だったこのサービスは大きな議論を呼びます。金融に関連するありとあらゆる法律が議論され、結局裁判所によって違法行為と認定され、Gold & Silver Reserve社は一部業務停止命令を、またCEOのダグラス・ジャクソンは有罪判決を受けることとなりました。最終的に同社は売却され、世界初の成功した電子通貨の試みは法律の壁によって終了することとなりました。

しかし、e-goldのサービスが築いたシステムや思想は、その後の電子通貨市場に多大な影響を与えたことは疑いのない事実です。