トークンエコノミクスとトークンマトリクス(その4)

連載解説

トークンエコノミクスとトークンマトリクス
その4 仮想通貨の評価

 

前回はこちら

 前回はトークンマトリクスとは何かを説明しました。今回は、仮想通貨の価値評価とトークンマトリクスの関係を解説します。


バリュエーション

 トークンマトリクスは、仮想通貨の経済活動の構成要素です。 トークンマトリクスを知れば、そのトークンが作り出す経済活動(エコノミー)を推定することが出来ます。従って、トークンの価値評価(バリュエーション)が可能となります。

トークンマトリクスは仮想通貨の構成要素であると説明しましたが、どのような要素があるのでしょうか。代表的な例を挙げます。

トークンマトリクスの構成要素の例
・ 利用状況(何を買えるのか)
・ 利用人口と人口構成(誰が使っているのか)
・ 発行数、発行上限数、流通量
・ 開発チーム
・ スマートコントラクトなどの付随機能
・ 取引所
・ 他の類似コイン
・ 法規制

それぞれを簡単に説明します。



利用状況

 そのトークン(コイン)で何を買えるのか、どのように利用できるのかは、最も重要な要素です。これは、トークン作成段階での開発チームの設計意図(デザイン)に大きく左右される項目です。
特定の企業の製品を買うためにしか使えないトークンと、イーサリアムのように世界中で広く利用されているトークンでは、利用シーンが全く異なるのは説明するまでもないでしょう。
現在どのように利用できるのか、将来の利用シーンはどの程度拡大されるのか、開発チームの意図も含めてトークンの利用状況はその仮想通貨の価値を判断する上で最も重要な要素のひとつです。

 

利用人口と人口構成

 どれほどの人数がそのコインを利用しており、また主に誰が利用しているのかは、上記の利用状況を実際に知る上で、あるいは将来性を判断する上で重要です。
少数の機関投資家が投機のために保有しているトークンと、一般人が日常の買い物のために利用するトークンでは、そこに生まれる経済活動が全く異なります。利用者数は多ければ多いほど人気が高いと言えますし、また利用者の居住地、年齢、職業などのデータがあれば、どのようなシーンで利用されているのか、また将来の発展性はどれほどあるのかが容易に推測できます。

 

発行数、発行上限数、流通量

 この指標は、法定通貨も同様です。現在どれくらい発行されていて、どの程度が流通しているのか、回転数はどうなのかは、仮想通貨に限らず経済の重要指標です。流通量が多く、回転が速い通貨は優秀な通貨であり、法定通貨ならばGDPに直接影響します。 仮想通貨も、大勢の人が頻繁に使う通貨は日常で利用されている優秀な通貨と言えますし、発行数に比べて流通量が少ないならば投資家が長期保有している通貨と考えられます。

 

開発チーム

 開発チームも、トークンの評価の重要項目です。仮想通貨にとっての開発チームは、法定通貨にとっての政治家と中央銀行に該当するからです。 政治家の発言ひとつで通貨の価格が乱高下することがあるように、開発チームがどのような意図でトークンを作成しているのか、今後どのようなプロモーションを仕掛けていくのか、利用シーンを拡大するためにどんな戦略を持っているのかなどは、将来の価値や利用者数の増加に直接的に影響します。

これには、トークンの機能も含まれます。 スマートコントラクト機能を持つコインと、商品券的な利用だけを想定されているコインは開発者の意図や戦略が全く異なります。

 

他の類似コイン

 仮想通貨は現在1,000種類以上が上場されています。従って類似したコインも多数あります。 イーサリアムとイーサリアム・クラシックは元は同じコインでありながら、ハードフォークで分離したという経緯から判るとおり、現在この二つのコインの機能にはほとんど違いがありません。しかし、開発陣が異なり、その戦略も全く異なるため、相場に大きな違いが生じていますし、利用者数にも大きな差があります。
オンラインゲームの利用を想定したコインも複数ありますし、ブックメーカーの機能を持つコインなども色々あります。このように、デザインが類似したコイン同士は常に比較の対象となり、価格変動にも強い相関性が表れます。法定通貨ならば、オーストラリアドルとニュージーランドドルが強い相関関係を持つ事に似ています。

 

法規制

 法律や規制は極めて大きな影響力を持ちます。 中国が仮想通貨の利用を突然禁止した昨年の夏には、多くの中華系仮想通貨が多大な影響を受けました。コインチェックのハッキング事件によるNEM (XEM) の不正引出し事件によって、匿名性の高い通貨が社会問題になり、匿名性を謳ったコインは市場から敬遠されるようになりました。 米国でイーサリアムが証券かどうかが争われていた時には、多くの投資家が注目していました。
このように、法律や規制なども大きな影響を持ちますが、外部要因であるため開発チームや一般の利用者には予想しがたい要素でもあります。

 

トークンマトリクスを構成する要素はこれら以外にも様々にあります。特に、流通量が多く、歴史が長いコインほど、マトリクスは複雑になっていく傾向があります。他方、ICOが発表されたばかりのトークンのマトリクスは単純です。

今回は、トークンマトリクスと仮想通貨のバリュエーションの関係について述べました。
次回に続く