トークンエコノミクスとトークンマトリクス(その5)

連載解説

トークンエコノミクスとトークンマトリクス
その5 ICOの評価

 

前回はこちら

 前回はトークンマトリクスの構成要素について説明しました。今回は、トークンマトリクスを用いたICOの分析について解説します。


ICOのバリュエーション

 ICO段階の仮想通貨の価値を正確に算出するのはとても難しいものです。取引所に上場されて自由に売買されるようになれば、市場の原理に従って自動的にその通貨の価格が形成されますが、まだ売買がされていない、あるいは上場前の非常に限定的な市場では、その価格は発行者によって一方的に決定されることが一般的です。トークンマトリックス分析は、プレセールスなどで提示される価格が妥当か否かを判断する際に大いに参考になるでしょう。


ICO段階でのトークンマトリックス

 上場前のトークン(コイン)ですので、実際のトークンマトリクスは非常に限定的です。したがって、バリューの算定に用いるのは、発行体が想定している将来のトークンマトリクスを用います。 ホワイトペーパーや、発行体の広報担当が説明するコインの特徴を分析して前回説明した各種要素を埋めて、トークンマトリクスを予想するのです。 もし、すでに上場している類似のコインがあればそれと比較しながら検討します。

 

トークンマトリクスの構成要素の例

・ 利用状況(何を買えるのか)
・ 利用人口と人口構成(誰が使うのか)
・ 発行数、発行上限数、流通量
・ 開発チーム
・ スマートコントラクトなどの付随機能
・ 取引所
・ 他の類似コイン
・ 法規制


このリストは前回記したトークンマトリクス要素の再掲です。 上場済みのコインも、上場された株式も、そして未上場のICOコインでも、相場の推移予想や現在価値を算出するための基本的な要素には、それほど大きな差異はありません。何故ならば、基礎的経済指標(ファンダメンタルズ)から大きく外れた価値評価(バリュエーション)は一時的には起こりえても、長期的には必ず基礎指標に比例した水準に収束するからです。それは仮想通貨でも他の金融商品でも変わらないのです。

 

利用状況(何に使えるのか)

 そのトークンが将来利用されるときのシチュエーションです。 特定の企業でしか使えないのか、グローバルに利用できるのかでシチュエーションは変わります。しかし、利用可能地域が広ければ良いという単純なものではありません。 例えばオンラインカジノやゲームのように、ユーザー数は少なくても、1人当たりの利用額が大きかったり、熱心な利用者が(ロイヤルユーザー)が多いセグメントはニッチであっても良いマーケットと言えます。

 

利用人口と人口構成

 そのトークンを将来利用するユーザー層です。上記利用状況とよく似ていて、特定の企業でしか使えないのか、グローバルに利用できるのかで利用者数は変わります。 競技人口の多いスポーツ、愛好者の多い趣味などは魅力的かもしれませんが、ニッチなジャンルが必ずしも悪いとは言えません。 また、ユーザーの囲い込みも重要でしょう。 競合企業が多かったり、参入障壁の低い業界をターゲットにしている場合と、寡占市場や免許制の市場などの場合では、評価の基準も変わることでしょう。 しかし、利用人口が多いか、人口は少なくてもコアなヘビーユーザーが多いかの、どちらか一方の条件は少なくとも満たされている事が重要です。 これらは、後のトークンの発行数、流通量などに大きく影響するからです。

 

開発チーム

ICOトークンの評価の際には開発チームの分析は最も重要な指標の一つです。 まだ市場に流通していないコインの将来性は、チームの潜在能力に大きく左右されるからです。 経験と実績に裏打ちされたメンバーが多数参加するチームのプロジェクトは、例え困難な目標でもやり遂げることが出来るでしょう。 一方で、無名の人物達によるチームは、プロジェクトの成功確率だけでなく、市場からの信頼性も低く、あるいは詐欺を疑われる事すらあり得ます。

 

(次回に続く)