仮想通貨の始まり(番外編 4)

連載解説

レスリー・ランポート
分散コンピューティングの第一人者

 

 レスリー・ランポート氏(Leslie Lamport)は、1941年アメリカ生まれのコンピューターサイエンティストです。 ランポート氏は、分散コンピューティングを語る上では欠かせない人物であり、彼がその分野に与えた影響は計り知れません。 彼は、分散コンピューティング理論の発展に対する功績によって、2013年にチューリング賞を受賞しています。 また、テキストの組版処理システムであるLaTexの開発者でもある多彩な人物です。


分散コンピューティングの大家

 ランポート氏は、マサチューセッツ工科大学の数学科を1960年に卒業し、その後他の大学で修士号と博士号を取得しています。コンピューターサイエンティストとしてMassachusetts Computer Associatesなどのいくつかの組織で働き、非常に広範囲な分野で素晴らしい才能を発揮します。 1980年にビザンチン将軍問題に関する論文を発表し、またテキストベースの組版処理システムであるLaTexを1983年に開発しています。さらには、コンピューターシステムの時相理論の研究者でもあります。しかし、彼の数ある研究の中でも最も重要なものは、分散コンピューティングとビザンチン将軍問題でしょう。

 分散コンピューティングとは、ひとつの計算を複数台のコンピューターに分割し、並列して行う計算処理方法のことです。この場合の複数台のコンピューターとは、一組織によって管理された多数のコンピューターである場合もありますが、インターネット上の不特定多数のコンピューターを用いた形式の方が一般的です。この場合の分散コンピューティングでは、ひとつの計算を分割して世界中の不特定多数の人々が所有するコンピューターにインターネットを通じて分担させ、その計算結果を統合します。このときに問題となるのが、悪意ある人物、あるいは不具合を起こした端末やソフトウェアが、不正確な情報を提供する場合です。 インターネット上で不特定多数の人物が協力し合う分散コンピューティングでは、常にこうした危険が存在し、それに対処する方法が重要になります。


ブロックチェーンと分散コンピューティング

 ブロックチェーンも分散コンピューティング技術を用いています。ビットコインのマイニングシステムが用いているProof of Work (PoW)は、世界中の誰もが簡単に参加でき、ノードと呼ばれる不特定多数のコンピューターが計算と記録を行っています。ビットコインを保有するA氏がB氏へビットコインを送信した場合、マイニングに参加している人々(のコンピューター)がこの送金を確認して承認し、記録します。しかし、悪意あるハッカーがA氏の送金情報を書き換えて自分のウォレットへ送金させようとするかもしれません。 仮想通貨ではこのような不正が行えないような仕組みが導入されています。


ビザンチン将軍問題

 このような不正行為の代表例がビザンチン将軍問題であり、ランポート氏は1980年にマーシャル・ピーズ、ロバート・ショスタク両氏とともに、”Reaching Agreement in the Presence of Faults”という論文を発表し、この中でビザンチン将軍問題を定式化しています。 その後もランポート氏らはこの問題に長年取り組み、その功績によってコンピューターサイエンス分野で最高峰の栄誉であるチューリング賞が贈られました。

 ランポート氏自身はブロックチェーン及び仮想通貨に関連した研究は行っていませんが、分散コンピューティングとビザンチン将軍問題に関する彼の研究は、ブロックチェーン技術に多大な影響を与えているのです。